経過(概要)

不当解雇撤回に向けての私たちの闘い

 

20174

 

はじめに

 学校法人奈良学園(理事長:西川彭(ちかし)、元奈良県教育長、以下奈良学園)は、幼小中高大の各種学校を持つ学校法人です。この3月末に奈良学園大学で教員の不当な大量解雇が強行されました。この暴挙について以下に概要をお伝えします。

 

大学再編における欺瞞と既存学部教員約40名の大量リストラ

 奈良学園は奈良産業大学の学部再編を計画した時、既存のビジネス学部と情報学部を「現代社会学部」とし、また新たに「人間教育学部」と「保健医療学部」を設置するという3学部体制を構想しました。既存学部の大学教員の所属先として「現代社会学部」を作る条件で、既存のビジネス・情報の2学部の学生募集を停止したのです。

しかし、奈良学園は、平成258月、文部科学省への学部設置認可申請過程で多くの欠陥を指摘され、「現代社会学部」の設置に失敗しました。奈良学園は、約40名の新規教員を大量採用し、平成264月に新たに「人間教育学部」と「保健医療学部」の2学部を設置し、奈良産業大学を奈良学園大学と名称変更しました。その一方で、「現代社会学部」の設置に失敗した結果、失敗の責任を負うべき理事会によって旧奈良産業大学の時から勤務している約40名の教員の大量リストラ計画がもちだされました。

 

許しがたい奈良学園のやり方

 奈良学園は、「現代社会学部」ができなければビジネス学部・情報学部の2学部が存続すると約束していましたが、現代社会学部の設置に失敗するやいなや、約束を反故にして大量リストラ計画をもちだし、「警備員なら雇ってやる」と脅迫しビジネス学部・情報学部の既存教員の退職を迫ってきました。

奈良学園の騙し討ちのような対応は法的にも、道義的にも許されず、ましてや教育機関が行うことではありません。

 

不当解雇は絶対許さない

最近10年間で300億円超の設備投資を行いながらも、現時点で法人として無借金で約200億円超の流動資産を持っております。また、大学をさらに拡充させる構想をもっております。このような経営危機とはほど遠い状況で大量の教員を解雇するなど前代未聞です。

大学では、様々な形で教員を活用することができ、現にどこの大学でもそうしています。実際、奈良学園もこれまでに解雇を行った前例はありません。

奈良学園の現理事会は、前理事会の不祥事の結果、正常化路線を掲げつつ誕生し、学園全ての児童・生徒・学生・教職員を大切にする「人間中心主義」を理念としてとなえ続けていますが、この解雇はこの理念を自ら蹂躙する行為です。西川理事長と理事会は教育機関を運営する資格はありません。

奈良学園は、長年にわたって奈良学園の高等教育を支えてきた教員を徹底的に排除しました。強行された不当解雇に対して、私たちは断固闘います。

 

闘いの現状

私たちは、3年間にわたって理事会の経営責任を追及し、全教職員の雇用をまもるために闘ってきました。これに対して理事会は誠実に対応することはなく、組合から既存教員の所属先として提案した「教育・研究センター」設置案もまともに取り上げることもしませんでした。そのため昨年11月私たちは奈良県労働委員会に奈良学園の不当労働行為の「救済」を申し立て、審議が続いております。

その審議中であるにもかかわらず、ついに3月末教員の不当な大量解雇が強行されました。これに対して425日には8名の組合員が奈良地裁に解雇の撤回をもとめて提訴しました。

現在、私たちは裁判および労働委員会の救済の二本立てで闘っております。

詳細は、本ホームページの「裁判」「労働委員会」のページをご覧ください。

以上

 

 

 

 

提訴に際しての私たちの主張

 

奈良学園大学教職員組合

執行委員長 川本正知

 

 ここでは、今回の提訴の社会的意義という点に的を絞り、それについて以下の3つの観点から述べます。

 

 まず第一に、この提訴で問われているのは、民間営利企業の経営のあり方ではなくて学校法人の経営のあり方です。

 

 奈良学園もその一つである学校法人という教育機関は、教育という社会の基盤をささえる役割を担うことにより極めて高い公益性をもっています。そのために税制上優遇され、公的な助成金も受けています。

 とりわけ高等教育機関である大学においては、「学問の自由」の観点から教員のもつ専門性が尊重され、真理の探究を旨とする研究と学生に対する専門的教育が遂行されるべきであり、それこそが経営の目的でなければなりません。すなわち「学問の自由」という権利を社会全体により深くかつ広範に浸透させ、より一層強力で確固としたものとするために、高等教育機関は運営されなければなりません。営利企業とは経営の目的が本質的に異なるのです。

 学校法人はこういった公益性の高い教育機関だからこそその経営には崇高で普遍的な独自の理念が必要であり、また高い倫理性と規範意識がもとめられます。法令を遵守することは当然のこととして、それだけでは不充分であり、むしろ積極的に社会に対して模範たるべき存在として常に自らに厳しい規律を課すことが求められています。また、税制上の優遇、公的な助成金を受けていることから社会に対する公的義務と責任を負っており、そのことを常に自覚していなければなりません。教育機関たる学校法人は、利益追求をその目的としてはならず、建学の精神に照らし社会における役割とその公益性を十分に自覚した運営がなされなければならないのです。また教育機関がこうした自覚を有するからこそ、それは若者に将来の展望と生きる勇気を与え、明るい未来を切り開かせる存在たりうるのです。

 しかし、このような観点からみると、私たちの提訴に至った経緯から奈良学園の教育機関として非常に残念としか言えない姿が明らかになります。私たちは、私たちが育んだ学園に対してあえて提訴をおこない、我が奈良学園が正常化され、堂々たる教育機関として再生されてゆくことを心から願っています。

 さて、学校法人奈良学園においては、その理事長および理事会がこれまでに再三にわたって違法、また背信的な経営を行うことにより奈良学園に甚大な損害を与えてきました。ところが、それに対して理事長および理事会の見識が問われ、その経営責任が追及されることは全くありませんでした。以下にその代表的な4つの事例をあげます。

 

 ①まず、平成18年度に起こった関西科学大学に係る虚偽申請と公文書偽造の事件があげられます。

 平成18年、奈良学園理事会は、奈良文化女子短期大学を改組して関西科学大学の設立を計画しました。その開設申請において、当時すでに亡くなっていた伊瀬敏郎初代理事長を理事会の構成員であるとした虚偽の設置申請書を文科省に提出したのです。この公文書偽造による虚偽申請は発覚し、文科省は大学設置申請を却下しました。虚偽記載による設置申請の却下は、日本で初めてのことであり、文科省から、3年間奈良学園の高等教育に関する全ての申請を受け付けないというペナルティーを課されました。

 この虚偽申請は有形・無形の莫大な損害を学校法人奈良学園に与えました。

 申請に伴い、奈良市登美ヶ丘の土地の駆け込み購入・新校舎の建設等で約300億円を使っており、新聞によれば、虚偽申請によってそれら以外に100億円の損害を奈良学園がこうむったとされております。また、これも法令違反ですが、設置申請の認可が下りないうちに学生募集をおこない、261名の入学者の内定を出しておりました。希望した大学・学部に入学できなかった受験生の受けた精神的被害が甚大であったことはいうまでもありませんが、これら内定者に対する一年間の予備校代そのほかの賠償に少なくとも全体で8000万円以上の出費を奈良学園はおこなわざるをえませんでした。また、関西科学大学の就任予定教員には、平成194月以降少なくとも一年にわたり給与を支払い続けました。

 経済的な損害だけにとどまりません。この虚偽申請によって奈良学園および奈良産業大学の信用は大いに失墜しました。しかも、奈良産業大学に関しては、「いずれ閉鎖する」と当時の理事長伊瀬哲也が奈良県、大阪府の高等学校等に対し公言しており、その悪影響も大きく、翌平成19年度に経済学部、法学部、経営学部を改組転換して新たに再生をはかるはずであった奈良産業大学のビジネス学部および既存の情報学部の入学者数は、復調どころか激減しました。

 理事会は、このように公文書偽造・虚偽申請という文科省および国民に対する背信行為を行い、それによって学校法人奈良学園に莫大な損害を与えました。これは極めて重大な背任行為です。

 それにもかかわらず、当時の理事長伊瀬哲也は責任を取ることなく理事長ポストに居座わろうとしました。その後、文科省の指導もあり、彼は翌年退職し、元奈良県教育長であった現理事長西川彭が平成194月に理事長に就任しました。しかし、この退職は学校法人奈良学園に対する違法行為の責任を問われた懲戒免職ではなく、損害賠償が請求されるどころか退職金が支払われました。

 

 次に、平成194月のビジネス学部の開設にかかわる虚偽申請があげられます。

 奈良産業大学には経済学部、経営学部、法学部、情報学部の4学部があり、平成18年度に、そのうちの経済学部、経営学部、法学部の3学部を改組してビジネス学部にするという計画が進められていました。つまり、関西科学大学の開設と同時にビジネス学部も設置されることになっていたのですが、ビジネス学部への改組の申請のほうは文部科学省に認められました。平成18年度内に学生募集が行われ、翌平成194月にビジネス学部がスタートしました。ところが平成193月に新たにこのビジネス学部の改組に関する虚偽申請の疑惑が浮上しました。大学内に調査委員会が立ち上げられ、平成19年の6月に提出された奈良産業大学コンプライアンス・ボードによる調査報告「「奈良産業大学ビジネス学部」認可申請書に関する疑惑の調査」によって、平成18年4月26日に奈良学園理事会が文科省に提出したビジネス学部への改組の申請書類にも虚偽の内容が含まれていたことが明らかになりました。

 ビジネス学部への3学部の改組を決定した平成18328日の奈良学園理事会の議事録の抄録が文科省に提出されましたが、そこにおいても、関西科学大学の申請において発覚した虚偽記載・公文書偽造と同様に、故人であった伊瀬敏郎が理事会の構成員として記載されていました。

 さらに、教授会記録の虚偽記載も明らかになりました。申請書類に含まれた平成18310日の経済学部、経営学部の教授会の議事録の抄録は改竄されており、教授会出席者が事実と相違していました。また、届出書に添付された教員名簿も虚偽のものであったのです。文科省に提出された虚偽の教員名簿に合わせて、3学部の改組を決定した教授会の出席者が大幅に改竄されていたのです。同日行われた法学部の募集停止の教授会の議事録の抄録は文科省には提出されてず、無申請で募集停止がなされました。文科省には2学部による改組転換として申請していたのです。

 なぜこのようなことをしたのでしょうか。それは、それぞれの学部(経済、経営、法)の学生定員に対する教員数が満たされていなかったことを隠蔽するために行われたのです。これは、規定の教員数を充足させていないという違法状態を生みだし長年放置してきた理事会を免責するものでした。3学部のビジネス学部への改組およびそれにひきつづいて行われた関西科学大学の設置申請・認可に、この違法状態の放置が悪影響を及ぼすことを恐れた奈良学園理事会および奈良産業大学上層部による組織ぐるみの隠蔽工作であったことが、調査報告によって明らかになりました。経済・経営学部だけをもとにビジネス学部に改組転換したことにしたのは、教員の充足ができておらず、大幅に大学設置基準に違反している法学部の教授会議事録の抄録を文科省に提出することができなかったからなのです。この調査によって、これら一連の虚偽申請は、ビジネス学部への改組転換およびそれにひきつづいておこなわれた関西科学大学の設置において文科省を欺くために行われた意図的な公文書偽造であったことが、明らかにされたのです。

 この奈良産業大学コンプライアンス・ボードによる調査報告書は学長に提出されるとともに、西川理事長および理事会にも手交されました。しかし、西川理事長および理事会はこの報告書を黙殺しました。彼らは学校法人奈良学園として前理事長らの背任行為に対して損害賠償を求めて告発するなど経営責任を追及しなければならなかったはずです。それを怠ったことは彼らによる学校法人奈良学園に対する重大な背任行為であります。

 また、ビジネス学部改組に関る虚偽申請の事実を、西川理事長および理事会は早急に文科省に報告し処断を仰ぐべきでした。しかし、これも行われませんでした。経済学部、経営学部、法学部は、長年にわたって文科省から多額の私学助成金を交付されておりました。またビジネス学部も、平成24年までは交付されておりました。つまり、西川理事長および理事会は文科省および納税者である日本国民に対して重大な背信行為を行ってきたのであります。

 

 さらに、平成25年度の現代社会学部申請取り下げにともなう経営責任があげられます。

 平成24年度、理事会は奈良産業大学のビジネス学部・情報学部を募集停止にし、平成264月からの人間教育学部、保健医療学部、現代社会学部の設置を計画し、同時に大学の名称を奈良産業大学から奈良学園大学に変更することを決定しました。この新3学部設置の目的は、平成29年度に大学の単年度黒字化を目指すというものであり、人間教育学部120人、保健医療学部80人、現代社会学部160人の総計360人を定員としました。

 しかし、理事会は文科省への学部設置認可申請過程で多くの欠陥を指摘され、現代社会学部の申請を取り下げざるをえなくなり、その結果、人間教育学部と保健医療学部の2学部のみからなる奈良学園大学が平成26年度からスタートしました。奈良学園および奈良学園大学は、この現代社会学部申請の取り下げにより、校舎改築工事費用、申請業務コンサルタント会社への支払い、テレビコマーシャルをはじめとする広報費等によって多額の損害を被っただけでなく、再び社会的信用を失うことになりました。また、26年度以降の学生定員が360人から200人になったことにより、一学年160人の入学金や授業料等が入ってこないことになり、今年度(平成29年度)までの約1600人分、約16億円の収入が「絵に描いた餅」となりました。平成29年度に単年度黒字化を達成するという理事会主導による経営改善計画は破綻したのです。

 平成25924日に現代社会学部申請取り下げに係る調査委員会が、奈良学園常勤理事会において設置されました。そして翌平成26324日に理事会・評議員会で調査報告が口頭でなされたとのことですが、その内容は今日まで一切公表されていません。私たち奈良学園大学教職員組合は平成26年結成の当初から団体交渉において再三にわたってこの調査報告の開示を要求し、平成27313日の奈良県労働委員会へのあっせん申請においても「「現代社会学部申請取り下げに係る調査委員会の報告書」を開示すること」を要求しました。しかし、57日のあっせん委員会において提出された理事会側の回答書では、「理事長としての権限で調査をしたが、理事長の個人的な考えによるものでありオフィシャルなものでないうえ、報告内容について事実誤認があるとして理事長が却下された。よって、開示はできない。」と回答しています。「理事長権限で」奈良学園常勤理事会において設置された調査委員会が「オフィシャルなものではない」とされ、「事実誤認があるので却下した」とは三百代言もいいところであり、およそまともな団体(しかも教育機関)の長の発言とはとても思えません。それは組合の大学健全化の意図および奈良県労働委員会のあっせんの努力を愚弄する言明であります。

 理事会は現代社会学部申請取り下げにともなって大きな損害を奈良学園に与えたにもかかわらず、こうしてその責任の所在さえも明らかにしようとしていません。理事長および理事会は、教育機関としての社会的責任を自覚して、このような経営上の失策および信用失墜を引き起こした責任を明確な形で取るべきであったのです。

 

 さらに平成28年度の「第三の学部」設置計画の一方的凍結があげられます。

 平成271月より、現代社会学部に代わる社会科学系の学部として「第三の学部」の設置が理事会主導で検討され、平成28年度初めには、翌29年度の文科省への申請を行うために、後は具体的な教員の人選に入るというところまで作業が進んでいました。しかし、平成2859日、当時の奈良学園大学学長梶田叡一から「第三の学部」案の検討の凍結または延期が、突然、学部長予定者であり申請作業の実質的責任者であるビジネス学部教授井上眞理子に言い渡されました。井上は、学長に対して、凍結理由の開示を求めましたが、拒否されました。その後も井上はその理由をあきらかにするようにと学園の常務理事らに何度も申し出ましたが、納得のいく説明は得られませんでした。この凍結または延期により平成30年度の社会科学系の学部の開設は不可能となりました。

 平成25年度の現代社会学部申請取り下げ以降学部の新設がなく、奈良学園大学は2学部200人規模にとどまり、黒字化の見通しは完全に破綻しました。そこで、理事会主導の高等教育整備拡充委員会が設けられ、収支のバランスをとるためには平成30年度には新しい学部を三郷キャンパスにつくらなければならないということになったはずでした。しかるに、凍結により収支の改善が先送りされ、今後の大学再生の見通しが立たなくなりました。このような事態に対して、理事会(学長もその一員)は説明責任さえ果たそうとしないのです。

 さらに、あろうことか、翌293月には井上教授を含めた社会科学系のビジネス学部教員11名と一般教育科目を担当可能な情報学部教員2名を解雇・雇い止めした後に、この4月からこの第三の学部の設置の検討を再開しております。「第三の学部」設置計画の一方的凍結は既存のビジネス学部・情報学部の教員の排除という悪辣な目的のもとに行われたと言わざるをえません。このような仕業はIIIで後述しますように、組合排除という不当労働行為と必然的に結びついているのです。

 以上述べてきました平成18年度の関西科学大学に関わる虚偽申請と公文書偽造、ビジネス学部の改組にあたっての虚偽申請と公文書偽造、平成25年度の現代社会学部申請取り下げ、平成28年度の「第三の学部」設置計画の一方的凍結、これらいずれについても理事会の経営責任が問われることはありませんでした。民間企業と異なり、公益性の高い教育機関だからこそより厳しい道義というものが要求されるにもかかわらず、奈良学園理事会はその自覚もなく、責任感が全く欠如しております。

 今回、学校法人奈良学園が大学再編を推し進め、その大学再編を口実として、ビジネス学部・情報学部教員の排除をもくろみ、大量の不当整理解雇をおこなったということ、このことに対してその経営責任が厳しく追及されなければなりません。

 再度申し上げますが、今回の提訴で問われているのは、教育という極めて高い公益性をもつ事業を行う学校法人というものの経営のあり方なのです。

  

二番目として、今回の訴訟が私立大学の将来に与える影響について述べます。

 

 わが国の高等教育の大半は私立大学によって担われています。従って、学問の自由および国民の文化的水準の向上は私立大学のとりくみに係っているといっても過言ではありません。それにもかかわらず、現在全国の私立大学のおよそ半数が定員割れの問題に直面しております。しかし、定員割れや財政難を理由に高等教育機関としての責務を放棄することは許されません。学部・学科の廃止は最終的な手段であり、それ以前にさまざまな努力がおこなわれなければならないのです。高等教育機関として、専門性を有する大学教員の雇用継続とそれによる教育・研究の水準の維持にまっさきにとり組まなければなりません。そしてそのためには、長期的なヴィジョンを大学の構成員が共有し、全構成員が議論に参加できる環境が整備される必要があるのです。

 しかるに、近年の奈良学園は、現代社会学部の申請に対する文科省の警告の意見を奇貨とするかの如く、ビジネス学部・情報学部の募集継続および翌年以降の再申請を行わず、現代社会学部に代わる「第三の学部」の検討も凍結し、また組合が提案してきた教育・研究センター(案)の真摯な検討も怠りました。そして、莫大な資金で新しい学部を設置して大学の存続を図る一方、既存教員の専門性を生かす場をことごとくなくし、それによって故意に過員を創り出し解雇しました。これでは悪徳的な営利企業並みではありませんか。

 今後、私立大学においては学部・学科の再編、縮小、廃止が増えていくことが予測されます。その中で、このような、教育機関にあるまじき背徳的な仕方による大量解雇をここで容認してしまえば、それが悪しき前例となり、大学改革や大学再編という名の下での理不尽な解雇が一般化してしまうでしょう。解雇を目的とした学部・学科廃止などは絶対に許されることではありません。また、それによって生じる大学教員の身分の不安定さは、高等教育を弱体化させることにつながります。そういう意味において、今回の訴訟は私立大学の将来に大きな影響を与えるに違いないと私たちは確信しております。

 

 

最後に、大学教員の労働者としての権利の蹂躙という問題について述べます。

 

 私たちは結成以来3年にわたり奈良学園大学ひいては奈良学園全体の正常化を目指して、労働組合として理事会の責任を追及してきました。その間、30回の団体交渉が行われましたが、理事長が出席したのはわずか2回であり、理事でもあり大学の教学の責任者である梶田前学長は一度も出席しておりません。また、団体交渉においては、学園側は組合の要求にまったく応えず、その提案をまともにとりあげようとしない不誠実な対応が繰り返されました。そのため、組合側は4度にわたり奈良県労働委員会にあっせんを申請しました。平成28726日の3度目のあっせんにおいては、「労使双方は、大学教育に携わる者として、教育の充実、発展及び健全な大学経営に尽力することが肝要であること、そのためにも、労使紛争を早期に終結する必要があることを自覚し、次の点を踏まえ、速やかに団体交渉を実施する。」として、「1.労使双方は、今後とも責任と権限を持って協議、回答できる者を選任して、今後の団体交渉を進める。また、互いの主張を真摯に受け止め、早期に問題解決が図られるよう努力する。 2.労使双方は、今後の団体交渉において、組合員の雇用継続・転退職等の具体的な処遇について、誠実に協議する。」とのあっせん合意が結ばれました。しかるに、その直後に、一方的に教員の事務職への配置転換募集が行われ、その後2度の団体交渉をへただけで、1024日に組合員に対する退職勧奨が常勤理事会において決議されました。

 そこで、1129日に組合は奈良県労働委員会に対して不当労働行為の救済を申し立てました。ところが、その救済の手続き中、組合員に対しては退職勧奨さえも行わず、平成2921日に学校法人は解雇予告通知をおこない、331日に解雇が強行されました。これらの不誠実団交、労働委員会でのあっせん合意無視、救済手続き中の解雇の強行という一連の対応は、憲法で保障された労働組合活動を支える労働委員会制度を軽んじる行為であります。

 今回、不当な整理解雇を強行され、わたしたち組合員全員が学園から排除されようとしています。これは明らかに、大学教員の労働者としての権利の蹂躙であります。先にも陳述しましたように、今回の解雇はビジネス学部・情報学部教員の生活権を否定する非情な仕打ちであるとともに、組合員の排除を目的とする不当労働行為なのです。